保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
原著
福岡県朝倉市北部のテンの食性 ―シカの増加に着目した長期分析―
足立 高行桑原 佳子高槻 成紀
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2016 年 21 巻 2 号 p. 203-217

詳細
抄録
過去10年でシカ(ニホンジカ)が増加した北九州において、シカによる植生変化が直接・間接にテンの食性に及ぼす影響を示すために、福岡県南部の籾岳において2004年から2014年までの11年間に採集した7,091個のテンの糞を分析した。シカが増加した11年間にテン糞中のシカの毛の出現頻度は上昇する一方、キイチゴ類や一部の昆虫の出現頻度は低下した。出現頻度は果実が75.6%と最も高く、次いで昆虫類が27.5%、哺乳類が12.4%で、そのほかの8食物群は5%未満であった。果実は5、6月に約60%、9月以降は90%以上と非常に高頻度であった。昆虫類は7月に90%、9月まで40-50%で、それ以外は20%程度であった。哺乳類の出現頻度は春に約40%で、その後減少した。出現頻度が高かった(<5%)果実はサルナシ、ムベ、クスノキ、キイチゴ属、サクラ属、ムクノキ、ヒサカキであった。これらには、サルナシやムベのように果実が大きく、色が地味で、匂いの強い哺乳類散布タイプのほか、キイチゴ類、ヒサカキなどのように果実が小さく、色彩の豊かな鳥類散布タイプもあった。これらの多くは林縁に生育する植物であった。
著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本生態学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top