保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
調査報告
アカボシゴマダラ外来亜種の山梨県での分布と定着の可能性
松本 祐樹 森 貴久
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キーワード: 越冬, 神奈川県, 外来蝶, 侵入, 幼虫
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2016 年 21 巻 2 号 p. 219-226

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抄録

1998年から神奈川県において、本来は中国に分布するアカボシゴマダラ名義タイプ亜種Hestina assimilis assimilisが確認されている。アカボシゴマダラ幼虫の食餌植物は在来種であるゴマダラチョウH. persimilis japonicaとオオムラサキSasakia charondaと同じエノキCeltis sinensis Persであるため、在来種との食物資源をめぐる競合が危惧される。山梨県でのアカボシゴマダラの侵入については報告例が少なく、現在の分布状況や個体数密度は不明である。また、越冬して定着しているかについてもわかっていない。本研究は、2012年から2014年に神奈川県から山梨県県央部にかけてのアカボシゴマダラの幼虫の分布と山梨県での越冬の可能性について明らかにした。アカボシゴマダラの山梨県での分布は山梨県県央地域まで確認されたが、生息率は山梨県県央地域と東部地域は神奈川県地域に比べて低く、県境地域ではその中間だった。また、自然下でも実験下でも山梨県内で越冬できることが確認されたが、自然下での生存率は8%と低かった。これらの結果から、アカボシゴマダラは山梨県県央部にまで徐々に分布を拡大していること、および山梨県での越冬は生理的には可能だが、自然下では生理的要因以外の要因で越冬しにくくなっていることが示唆された。今後、山梨県内でのアカボシゴマダラの生息率が上昇すれば、在来種蝶への悪影響が懸念される。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会

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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
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