論文ID: 2306
要約:生物多様性保全において科学的根拠を利用する「エビデンスに基づく保全」の重要性が近年益々認識されている。生物多様性に対する脅威となる要因の影響や、保全活動の効果を評価することは、保全のために重要なエビデンスとなるが、これらの評価を行うためには様々な研究デザインが用いられている。ランダム化比較試験やBACI (Before-After-Control-Impact)デザインなど、複雑な研究デザインの方が頑健なエビデンスを導けることはすでに知られているが、どのデザインがどれほど正確なのか、定量的な比較はあまり行われてこなかった。本稿では、脅威や保全活動が生物多様性に及ぼす影響を異なる研究デザインがどれだけ正確に推定できるのかについて、近年の研究成果を基に解説する。また、生態学や保全生物学で頑健な研究デザインがあまり利用されていない現状と、この問題がエビデンスに基づく保全を推進する上での障壁となっている問題について議論する。