2016 年 24 巻 p. 85-91
電子線で蛍光体を励起することで生じるカソードルミネッセンス(CL)を用いたバイオイメージング法は,ナノスケールの空間分解能と分子種識別能を併せ持つイメージング手法である.この手法の実現のために最も重要なのが,タンパク質一分子と同程度のサイズかつ高い電子線発光輝度を持つ蛍光体の作製である.本研究では,レーザーアブレーション法と均一沈殿法を用いてCLバイオイメージングのための蛍光体を作製した.レーザーアブレーション法によって作製した蛍光体は,粒径のコントロールが困難で,数十nm程度のサイズを持つ蛍光体のCL輝度もイメージングに不十分であった.一方,均一沈殿法では,沈殿剤の尿素を高濃度に用いた場合(720 mg/mL),40 nm程度の均一な粒径を持つ蛍光体の作製に成功し,単一粒子のCLイメージングに成功した.更に,添加希土類元素濃度,焼成温度,共添加元素を制御することで,より高輝度な蛍光体が作製可能であることを示した.