2016 年 24 巻 p. 92-97
TiO2は太陽光の大部分を占める可視光に応答しないため,太陽光エネルギー変換型光触媒としては適さない.本研究では,異種元素の共ドーピングおよび遷移金属種による表面修飾という二通りのアプローチにより,ルチル型TiO2の可視光応答化を試みた.TaとNを共ドーピングしたルチル型TiO2が,可視光照射下で水を酸化して酸素を生成する光触媒となることを見出した.このTiO2:Ta/Nを酸素生成光触媒とすることで,Fe3+/Fe2+レドックス対存在下,SrTiO3:Rh光触媒との組み合わせにより擬似太陽光照射下での水の完全分解に成功した.また,ルチル型TiO2上へ含浸法を用いて水酸化コバルトを担持することで,可視光に応答して硝酸銀水溶液から酸素を触媒的に生成できることを見出した.本系は,半導体光触媒により,850 nmまでの広域可視光を用いて水を酸化した最初の例である.