2023 年 31 巻 p. 107-111
有機分子により被覆された無機ナノ粒子はサイズ・形状に依存したユニークな物性を発現する.さらに,溶媒に分散可能であり,医療・工学的用途が多数報告されている.これまで,サイズ制御は金属イオン濃度が希薄な液相法で行われている.結果,ナノ粒子合成量の増加に伴い廃液量が増加し,環境面の課題が残る.現在,我々はアルキルアミン融合シュウ酸錯体を原料として用いたナノ粒子合成法を研究している.この手法では,溶媒を用いることなく,少量の配位子中でサイズが均一な単分散ナノ粒子の合成・予測可能なサイズ制御までも可能としている.その一方で,合成実績は少なく,汎用性の向上には新たな金属種での錯体の合成が必須である.本研究では,新たにニッケル,コバルト,スズ,バナジウムを金属イオンにもつアルキルアミン融合シュウ酸錯体の合成を試みた.得られた金属錯体の構造・物性はX線回折,赤外分光法,熱重量測定装置により評価した.