2023 年 31 巻 p. 112-116
バイオリファイナリー社会を実現するためには,結晶構造を有する難分解な植物セルロースを,有用物質生産の起点となるグルコースへと酵素によって変換する必要がある.しかし,変換効率が低いため,酵素反応槽へ外部から加熱するなどのエネルギーの大量投入を余儀なくされている.筆者は,難分解性の物質であっても,エネルギー生産するために,エネルギーを投じることはナンセンスであると考えており,時間をかけても,極力追加のエネルギーの投入なく,かつ環境負荷の低い方法を考えていくことが必要であると考える.本研究では,太陽光を熱に変換する性質を持つ星形金ナノ粒子の表面へ,独自の酵素クラスター化設計を反映させつつ耐熱性のセルロース分解酵素(セルラーゼ)を固定化することで,太陽光により,光応答的に粒子表面の局所反応場の温度を向上させ,ボイラーを使わずに効率のよい酵素糖化を達成する方法を開発した.