2024 年 31 巻 p. 122-126
組織再生や細胞機能の解析に向けて,組織や臓器の細胞外マトリックス(ECM)を再現した足場材料が必要とされている.ヒトや動物の組織から免疫原である細胞を除去した脱細胞化組織が移植材料として利用されているが,細胞が浸潤しにくいため細胞培養用の足場材料への応用は困難である.本研究では,脱細胞化組織粉末を加圧成型したECMブロックの作製法の開発,およびECMブロックの多孔質化と細胞培養基材としての有用性の解明に取り組んだ.冷間等方圧(CIP)印加により高強度のECMブロックが作製可能なことを明らかにし,また,脱細胞化組織粉末の原料によってECMブロックの特性が変化することを見い出した.さらに,NaClとタンパク質架橋酵素を用いたブロックの多孔質化を行い,多孔質ECMブロックに細胞が接着可能なことを明らかにした.本研究により,CIP成型を用いた動物組織のECM組成を有する新たな足場材料の作製基盤が確立された.