抄録
本稿では社会科学系の初年次学生における起業への意識傾向を、主体性の構成要素と関連させながら調査した。その結果、主体性の構成要素のうち「想像力」のみが起業意欲と関連しており、「自覚」「自由意志」は起業意欲を低下させる要因になる可能性が示唆された。主体性は事業構想・実装・運営を司る人材に必須の素養であるが、その構成要素である「自覚」と「自由意志」を獲得する過程で起業意欲が減退しないよう注意を払う必要がある。また「想像力」については、バックキャスティング・アプローチで自身のキャリア・事業を明確化する育成方針が有効といえる。今後は起業に至り長期構想を実現させた人材を追跡調査し、修学意識・過程と育成方法を精緻化させることが望まれる。