組織間関係を対象とするマネジメント・コントロール・システム(MCS)研究で,信頼が成果を阻害するリスクを低減している点で,MCS を補完していることが明らかにされた。組織内MCS 研究でも同様に,上司への信頼(垂直的信頼)やメンバー間の信頼(水平的信頼)が協働を抑制することが議論されている。しかし,垂直的信頼と水平的信頼が同時に,どのようにMCSを補完しているのかは明らかにされていない。本稿では,ホテル業A 社を対象に,MCS として用いられている予算管理と方針管理が協働を促すプロセスに垂直的信頼と水平的信頼がどのような影響を及ぼしているのかを検討した。その結果,垂直的信頼は予算管理が方針管理での議論を促すプロセスに,水平的信頼が方針管理での議論が協働を促すプロセスに正の影響を及ぼすことが明らかとなった。