2020 年 49 巻 1 号 p. 41-46
紙は,原材料の繊維や紙料調成及び抄紙の条件によって性質が異なり,構造や紙層形成など,多角的な研究が行われている.古文書などの紙における繊維組成解析は,主に官能検査による主観的判断が主である.また,客観的な繊維組成解析は,薬品溶液による染色を行うため,紙の破壊が伴い,解析対象によっては非破壊による手法が望ましい.そこで本稿では,デジタルカメラにより非破壊で得られたデジタルマクロ画像を使用し,VGG-16による紙の繊維組成の自動分類法を提案する.その結果,紙の厚み方向における繊維の層状構造を判定することが難しい,ボケが含まれる画像に対する分類精度は課題として残るものの,3回の実験における予測分類結果と繊維組成試験結果との平均一致率は94.2%となり,高い精度で繊維組成を分類することが可能となった.そのため,今後は,サマルカンド紙をはじめとする歴史的文化財を用いた紙の伝播解明のための解析技術として,本提案手法を使用する予定である.