1998 年 16 巻 2 号 p. 267-273
健常人で安静閉眼時に脳波を測定するとα波が頭頂部から後頭部にかけ導出される。鍼鎮痛発現時にも、広汎に分布したα波が観察されるが、同じα波として扱われる波形でも、その両者の揺らぎの挙動は違う。両者の波型をカオス解析すると、両者ともフラクタル構造を有し、周期性を示すが、その軌道は後者のほうが安定している。また異なった電極部位からの波形データを重ね合わせると、前者では所々に特異的なパターンの形成があり、後者の方が全体によく同期する。これは、鍼鎮痛により知覚処理機能が低下している状態を反映したものであろう。