抄録
本研究の目的は,月次ベースの残余利益モデルの株価説明力,及びそのインプット係数の推移について,日本企業の連結財務データ(約75,000サンプル)を用いて,1997年6月から2003年8月までの75ヶ月を対象に検討する点にある。本稿の特徴は,月次のアナリスト予想利益のダイナミックな変化をモデルに取り込んでいる点にあり,株式価値評価の精緻化を狙いとしている。月次ベースでの残余利益バリュエーション研究は,日米欧でも既存研究が見当たらない。発見事項を要約するならば,第1に,残余利益モデルはマンスリーという実用に耐えうる間隔でも有効に機能する。このことから,本モデルを用いれば,アカデミクスと実務の融合可能性は極めて高いと判断される。第2に,残余利益モデルの有効性は時系列的に安定しておらず,近年になって急速にその有効性が増してきている。会計ビッグバンによって,会計数値の有用性が高まってきた可能性が示唆される。