2008 年 2008 巻 9 号 p. 61-77
本稿の目的は,継続企業の前提に関する追記(GC)の開示における監査人の行動パターンを解明することである。先行研究では,財務的困窮状態に陥った場合,経営者は会計発生高を利用して利益を裁量的に増加させることが明らかにされている。本稿では,倒産に直面するほどの財務的困窮企業は利益調整を行うが,それが限界となって反転し多額の損失(負の異常会計発生高)が計上される時点で,当該企業の倒産リスクは高くなり,GCの開示が求められると考え,これについての仮説を設定する。そして,GCの開示企業と,それと対比するためのコントロール企業における異常会計発生高の比較を通じて当該仮説を検証する。本稿の分析により,倒産リスクが高い(異常会計発生高が負であり絶対値が大きい)企業ほど,監査人はGCの開示を求めることが明らかとなった。また,GCの開示時点は監査人の訴訟リスクに影響を受けていないことも分かったのである。