2016 年 36 巻 1-2 号 p. 33-
咬合平面がカンペル平面と平行であるということは,これまで複数の文献により報告されているが,症例によっては平行性を有さないものも多く存在する.本研究は,軟組織と硬組織の計測点が2D エックス線画像に比べ正確に観察できる3DCT(三次元コンピュータ断層撮影)を用い,顔面頭蓋の側貌形態の違いによる咬合平面とカンペル平面の位置関係をセファロ分析の結果から統計的に検討することを目的とした.成人有歯顎者(N=50)の頭蓋の3DCT で得られた正中矢状面投影像に対し,SN 平面を基準(以後,対SN)としてセファロ分析を行った.側貌の前後的形態をN-Me の角度(対SN),上下的形態を下顎下縁平面の角度(対SN)で表し,咬合平面とカンペル平面のなす角度との関連を線形重回帰分析で調べた.その結果,N-Me の角度(対SN),下顎下縁平面の角度(対 SN)はともに,咬合平面とカンペル平面のなす角度に有意に関連することが示された(p <0.01).これにより顔 面頭蓋の側貌形態によって,咬合平面とカンペル平面の位置関係は影響を受けることが示唆された.また,カンペル平面を用いて咬合平面の再構築を行う場合,N-Me の角度(対SN),下顎下縁平面の角度(対SN)を考慮し,「平行」の他に,「前開き」,「後開き」の基準を追加することで,患者がもともと有していた咬合平面の角度をより正確に再現できると考えられた.【顎咬合誌 36(1・2):33-41,2016】