2017 年 37 巻 1-2 号 p. 44-
有床義歯において,義歯を安定させるために咬合力のコントロールをすることは重要な要素である.中でも,下顎前突のような症例は通常の人工歯排列をすると義歯の転覆が起き,床下粘膜の痛みや義歯床破折などの不調の原因になり得る.また,嚙み癖や残存歯の影響で下顎位の偏位が起きると長期的安定が望めないこともある.本症例では,下顎位の偏位を解消させ,なおかつ咬合時に義歯が安定するよう考慮した人工歯排列を行った.また,咀嚼能力検査キットを使用することにより,治療前と治療後の咀嚼能力の差が計測され,的確な評価に繋がることがわかったので報告する.