日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
痴呆性高齢者の在宅介護長期継続と介護中断に影響する因子の検討
赤澤 寿美岩森 恵子原田 能之前原 貴美枝山村 安弘
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 4 巻 1 号 p. 76-82

詳細
抄録
目的:痴呆性高齢者と家族介護者双方が高いQOLを保つことができるよう支援するために,痴呆性高齢者と家族介護者をとりまく背景事情を調査し,在宅介護が困難になる要因の明確化と今後の看護・介護支援策の検討を行った.対象と方法:以前在宅生活をしていたが現在は療養型病棟に入院している痴呆性高齢者の介護者35人(以下A群),在宅サービス等を利用しながら痴呆性高齢者の在宅介護を継続している介護者30人(以下B群)の計65名を対象とした.要介護者に関しては,年齢,性別,痴呆期間,主たる疾病,副疾病,治療,ADL依存ランクと痴呆ランク,要介護度を診療録から調査し,介護者に関しては年齢,性別,続柄,介護期間,同居人数,介護代替者の有無,かかりつけ医の有無,サービス利用状況,介護負担感を半構成的面接法にて調査してA,B群間で比較した.結果:要介護者のADL依存ランクと介護量は有意に相関しており,同時に負担感とも有意に相関していた.特にトイレ動作,移動補助,入浴で負担感が高かった.逆に,時間の制約は,ADLランクが低いほど負担が大きくなっており,特にA群に著明であった.両群とも代替者あり群のほうが介護負担は小さく,代替者の存在はB群に有意に多かった.両群とも,介護者の大半が何らかのサービスを利用しており,サービス利用数に群差はなかったが,B群はA群に比して,家庭外サービスの利用率が有意に高かった.介護負担感はCCIスコアおよび27項目の合計点数に群差は見られなかったが,27項目のうち制約感はB群に比してA群で有意に高かった.介護期間は個人差が大きかったが,両群とも介護機関と負担との間に相関はなかった.A群の再入院の理由は,要介護者の状態悪化と,介護者の介護限界が多く,介護限界を理由にした者の多くは負担感が高かった.痴呆性高齢者をかかえる家族が在宅介護を中断して再入院にふみきった要因は,(1)介護代替者がいないこと,(2)不十分な家庭外サービスの利用,(3)制約感の強さ,の3要因とその他の様々な要因が複雑にからみあっていることが示唆された.結論:要介護者,介護者双方のQOLと,両者をとりまく環境を十分に把握し,サービス内容の検討と個々人の,その時々の状態に合わせた支援活動が今後重要視されるべきである.
著者関連情報
© 2002 一般社団法人 日本地域看護学会
前の記事 次の記事
feedback
Top