2016年熊本地震では,斜面上の宅地地盤が大きく変形して甚大な被害をもたらした.本研究は熊本県益城町での宅地地盤の被害メカニズムを,火山灰質粘性土の変形特性から明らかにすることを目的として,現地で採取した火山灰質粘性土試料を用いた非排水繰返しせん断試験を行った結果を報告する.土試料は原位置の土被り圧に応じた拘束圧力で圧密し,斜面の傾斜に相当する初期せん断応力を与えて斜面の応力状態を再現し,2016年熊本地震の強震動地震記録波形をせん断応力波形として作用させた.その結果,不飽和火山灰質粘性土であっても,繰返しせん断によって過剰間隙水圧比が0.9程度まで上昇し,せん断ひずみにして15%以上変形した.また,初期せん断を与えた場合,初期せん断を与えた側に大きな残留せん断ひずみが発生した.したがって,熊本地震では,水分を多く含む火山灰質粘性土が強震動を受けて,有効応力の低下とともに軟化してせん断変形し,傾斜した宅地地盤を斜面下側に移動変形させたものと考えられる.