2025 年 25 巻 7 号 p. 7_38-7_61
本研究では,伝播経路において不均質減衰を考慮したスペクトルインバージョンにより経験的サイト増幅率を推定し,地中の硬質地盤における観測記録を,推定した増幅率で除すことにより,解放地震基盤面(Vs 3200 m/s)における応答スペクトルを逆算する新たなアプローチを提案した.スペクトルインバージョンでは,既往手法を拡張し,水平動と上下動の同時解析が可能なモデル化を行うとともに,拘束条件とする2つの基準観測点を定量的な指標に基づいて選定した.この手法を適用して推定した経験的サイト増幅率を,既往の隣接2地点ネットワークを用いた手法により推定した増幅率と比較したところ,両者の結果は概ね整合的であったが,5-20 Hz程度の高周波数帯では,最適な基準観測点を選定して不均質減衰を考慮した解析を行った本研究の方が結果の信頼性が高い可能性が示唆された.本研究の手法により逆算した解放地震基盤面における応答スペクトルを,1次元重複反射理論に基づくはぎとり解析と経験式による地盤補正を組み合わせた従来手法から求めた結果と比較したところ,地中地震計が地震基盤相当面(硬岩)に設置されており地盤補正が不要な観測点では,両者の結果は概ね整合的であった.一方,地中地震計が軟岩に設置され,地震計と地震基盤面の間の深度差が大きな観測点では,特に周期0.2秒程度よりも長周期側において,両者の差異が大きくなる傾向があり,これは,本研究では浅部のみならず深部地盤による増幅率も観測点ごとに推定した効果が現れたものと考えられる.