抄録
症例は81歳男性。主訴は腹痛,嘔吐。既往に開腹歴はなかった。2009年4月下旬に狭心症の診断でステント留置術を施行。入院中に主訴が出現し,腹部単純X線検査で小腸拡張像を認め,腸閉塞症の診断となり,当科紹介受診した。腹部造影CTで小腸に著明な拡張が認められたが,あきらかな閉塞起点は同定できなかった。イレウス管挿入し,小腸造影を行うと下腹部正中にループ状の小腸が描出された。1週間経過するも症状改善せず,病歴および画像所見より内ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術施行。術中所見では回腸がS状結腸間膜右葉の欠損部に嵌入しており,S状結腸間膜内ヘルニアと診断した。愛護的に小腸を整復し,腸管切除は行わず,S状結腸間膜右葉の欠損部を縫合閉鎖した。術後経過は良好で,術後7日目に退院した。術前にS状結腸間膜内ヘルニアを疑い,開腹手術で治癒した1例を経験した。内ヘルニアの治療は近年,腹腔鏡による手術症例も散見されるため,術式の検討も視野にいれ術前検査を行う必要がある。