日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
破裂肝細胞癌に対して緊急動脈塞栓術後に肝切除術を施行し病理組織学的完全奏効が得られた1例
前田 隆雄平松 聖史土屋 智敬尾辻 英彦田中 寛木村 明春待木 雄一
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2014 年 34 巻 6 号 p. 1171-1174

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抄録
症例は68歳の男性で,上腹部痛を主訴に受診し右季肋部に著明な圧痛を認めた。CTで肝S5に占居性病変と腹腔内に液体貯留像を認め,肝細胞癌 (hepatocellular carcinoma;以下,HCC) 破裂を疑い緊急で腹部血管造影検査を施行した。右肝動脈の造影で肝S5に腫瘍濃染と血管外漏出像を認め,同部の破裂と診断しlipiodol+gelpartでTAEを施行した。その後初診時上昇していたPIVKA─Ⅱは正常化した。TAE施行より3ヵ月後,待機的に肝S5および腹壁合併切除術を施行した。病理組織学的所見では肝内の腫瘤性病変は壊死性組織を認めるのみで腫瘍の残存はなく病理組織学的完全奏効と診断した。術後経過は良好で術後13日目に退院となった。HCC破裂に対しTAE施行後二期的に肝切除を施行した症例は散見されるが,病理組織学的に完全奏効が得たれた症例はまれであり文献的考察を加え報告する。
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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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