日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
超音波内視鏡検査(EUS)を誘引とした膵仮性囊胞破裂により腹腔内出血をきたし緊急手術により救命した1例
松井 琢哉安田 顕渡邊 貴洋山本 稔北上 英彦早川 哲史
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2015 年 35 巻 3 号 p. 267-270

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抄録

超音波内視鏡検査(以下,EUS)を誘引とした膵仮性囊胞破裂により腹腔内出血をきたし緊急手術により救命した1例を経験した。症例は43歳男性で,多量の飲酒歴あり。近医で膵尾部の囊胞を指摘され当院へ紹介となった。アルコール性慢性膵炎に伴う膵仮性囊胞の診断で経過観察されていたが,囊胞の増大を認め入院となった。内視鏡的ドレナージを考慮しEUSを施行後,腹痛と血圧低下を認めショックとなった。再検したCTで囊胞の急激な増大と腹腔内の液体貯留を認め,膵仮性囊胞破裂による腹腔内出血と診断し緊急手術を行った。術中所見では腹腔内に大量の血性腹水を認め,囊胞前壁を形成する胃底部後壁の漿膜が裂け囊胞が破裂しており,膵体尾部脾合併切除術を施行した。膵仮性囊胞の合併症のなかでも,囊胞破裂による腹腔内出血は比較的まれである。自験例では破裂前に施行したEUSが,破裂の誘引になったと考えられる。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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