抄録
症例は55歳男性。胸部食道癌に対して右開胸開腹食道亜全摘術,胸骨後胃管再建術を施行した。術後3年5ヵ月より胃管潰瘍で保存的加療を繰り返していた。術後4年2ヵ月目に,心窩部痛を主訴に救急外来を受診した。心窩部から前胸部の皮膚に発赤を認め,CT検査で胸骨前面皮下に気腫と脂肪織濃度の上昇が認められた。胃管潰瘍の胸壁穿通と診断し,緊急手術を施行した。胸骨部分切除を行い,壊死組織を除去して穿通部位を確認した。同部を閉鎖した後,大網で被覆した。術後経過は良好で16病日に退院となった。胃管潰瘍の穿孔,穿通部位はその再建経路によって特徴があり,診断や治療開始の遅延により致命的になりうる。胃管潰瘍がみられた場合には慎重な経過観察を行うとともに,穿孔,穿通を疑う場合には積極的に外科的介入を行うべきである。