2017 年 37 巻 3 号 p. 421-425
腰ヘルニアにおいても鼠径ヘルニア同様,近年Tension-freeの概念に基づいた人工繊維素材を用いた修復法が報告されている。今回われわれは,成人鼠径ヘルニア用半吸収性メッシュ(ULTRAPRO plug:以下,UPP)を用いて修復した特発性上腰ヘルニアの1例を経験した。症例は87歳の女性。左背部腫瘤を主訴に受診した。左背部に7×5cm大,無痛性で用手還納が可能な腫瘤を認めた。腹部CT検査で左上腰三角より皮下へ脱出する下行結腸を認め,上腰ヘルニアと診断し手術した。背部アプローチで,上腰三角部に脱出するヘルニア囊を確認し還納した。ヘルニア門の直径は約3.5cmであり,UPP(Mサイズ)を用いて修復した。術後3日目に退院し,術後2年経過した現在再発を認めていない。半吸収性で術後の異物感が少ないUPPは,形状もヘルニア門に適合することから,上腰ヘルニア修復術に有用であった。