日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
緊急開腹手術を施行した静脈血栓を有する漏出性胆汁性腹膜炎の1例
皆川 雅明宮田 明典石田 隆志野村 幸博
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2019 年 39 巻 5 号 p. 963-966

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抄録

症例は87歳女性。来院前日発症の右季肋部を最強点とする腹膜刺激徴候を認め当科紹介となった。腹部超音波検査,CT検査で胆囊は腫大し,壁はびまん性に浮腫状で,腹水貯留を伴っていた。腹腔穿刺の腹水ビリルビンは高値で,胆汁性腹膜炎の診断で緊急開腹手術を施行した。腹腔全体に中等量の胆汁が貯留し,胆囊に穿孔部位を認めなかったが胆囊体部の壁が菲薄化しており,同部位が胆汁性腹膜炎の原因と考え,胆囊摘出術を施行した。病理組織診断では,胆囊壁の菲薄部で静脈血栓を有し,漿膜下層において壊死を伴う浮腫を認めた。組織学的に穿孔部位を認めず,静脈血栓による胆囊壁の循環障害が原因と考えられる漏出性胆汁性腹膜炎と診断した。胆囊壁内に静脈血栓を有した循環障害が原因と考えられる漏出性胆汁性腹膜炎は,自験例を含め本邦で5例報告されており,まれな症例であったため,文献的考察を加えて報告した。

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© 2019, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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