抄録
本研究は,保育者養成課程の模擬保育において,保育者視点映像を視聴した学習者のリフレクション内容の分析を通して,当該映像の学習者への利用可能性を明らかにするものである。保育者視点映像と俯瞰視点映像を比較した結果,保育者視点映像では保育者と子どもの相互作用や保育者の対応に注目する傾向があり,俯瞰視点映像では保育者の行動や活動の全体的な流れに注目する傾向が示された。これにより,保育者視点映像と俯瞰視点映像は相互補完的な関係にあり,保育者視点映像の視聴は,従来の俯瞰視点映像とは異なり,保育者と子どもの関係や保育者の対応に焦点を当てるリフレクションを促す効果がある可能性が示唆された。この知見から,学習者が保育者視点映像を利用することで,模擬保育における学習機会の偏りとリフレクションの量と質の確保に関する課題を解決する見通しが得られた。