2009 年 35 巻 2 号 p. 65-72
エチレン阻害剤である1-メチルシクロプロペン(1-MCP)化合物を,エチレン無処理の緑熟果‘キャベンディッシュ’バナナ(Musa sp., AAAタイプ)に3回処理し,追熟に与える影響を調べた。3回処理では,処理バナナのエチレン生成が27日目に現れたが,無処理の方は8日目に現れた。1回処理は3回処理に比べ追熟を遅らせる効果は小さかった。しかし,100と500nℓ/ℓの1-MCP濃度による差はなかった。追熟期は異なったが,追熟後の果実硬度や澱粉の糖への変化の程度は処理区と対照区の果実でほぼ同じであった。しかし,しばしば皮の異常な変色があった。無処理バナナのクライマクテリックピークが予想より早い4日に観察される場合があった。そこで,輸送や貯蔵中に外生エチレンに曝されたバナナに対する処理効果を推定する実験を行った。エチレンの存在は1-MCP処理の効果に影響を与えた。エチレンが0.5μℓ/ℓ以下では,追熟を最大限に遅延させるためには20nℓ/ℓの1-MCPで十分であった。しかし,1.0μℓ/ℓのエチレンが存在すると,同じ効果を得るために100nℓ/ℓの1-MCPが必要であった。これらの結果は外生エチレンと1-MCPが拮抗関係にあり,輸送途中で晒されるエチレンの効果はある程度高濃度の1-MCPを用いることにより打ち消せることが示唆された。