日本食品保蔵科学会誌
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収穫後のエタノール蒸気処理がスダチ果実の品質に及ぼす影響
野間 雄太鈴木 康生寺井 弘文山内 直樹
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2009 年 35 巻 4 号 p. 187-193

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抄録

 スダチは香酸カンキツの一種であり,常温では脱緑しやすい。エタノール処理は収穫された園芸作物の追熟や老化を遅延する。貯蔵期間を延長することを目的に,エタノールパッドを用いた収穫後のエタノール蒸気処理がスダチ果実の品質に及ぼす影響が調べられた。スダチの緑熟果は,0.3,0.6,1,3,6 gのエタノールパッドとともに有孔ポリエチレン袋に同封され,20℃暗所下で貯蔵された。また,エタノールパッドを同封しない処理をコントロールとした。1 gのエタノールパッドで処理された果実のクロロフィル含量の減少はコントロールに比べて遅く,また新鮮重の減少も抑制された。果汁中の全可溶性固形物含量,滴定酸,糖酸比,pH,アスコルビン酸含量,酸化型アスコルビン酸含量などの内部品質に,コントロールとエタノール蒸気処理した果実間で差異は認められなかった。しかし,3 gと6 gのエタノールパッドで処理された果実では果皮が褐変した。これらの結果から,スダチにエタノール蒸気処理を行うと脱緑が遅延し,内部品質に悪影響なく貯蔵期間を延長できる可能性が示された。

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© 2009 一般社団法人日本食品保蔵科学会
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