2012 年 38 巻 5 号 p. 277-283
結球キャベツにおけるストレス応答の一端の解明を目指して,結球最外葉からコルクボーラーで切り出したディスク試料について処理後120分まで継続的に,植物のストレス応答において重要な役割を担っているカルモデュリン(Calmodulin : CaM),フォスフォリパーゼD(Phospholipase D : PLD),ACC合成酵素(1-aminocyclopropane-1-carboxylate synthase : ACS)をコードするBoCam1,BoCam2,BoPLD1,BoPLD2,BoACS2の各遺伝子の発現解析を行った。リアルタイム定量PCRによる解析の結果,キャベツのBoCam1の発現レベルは,切断処理によって著しく増大し,処理60分後には処理前に対して6.4倍に達した。また,BoCam2の発現レベルは,増大程度は大きくはないものの,処理60分後には処理前の1.6倍となった。一方,PLDをコードするBoPLD1の発現レベルは,処理前に比べて120分後に1.5倍に増大した。また,BoLPD2の発現レベルは,実験期間中ほぼ一定の状態を維持し,処理後の経過時間による差はみられなかった。他方,ACSをコードするBoACS2の発現レベルは,処理後15,30分後に一旦低下した後に増大し,120分後には処理前の1.6倍に達したものの,実験期間を通して大きな増大を示さなかった。以上の結果を総合的すると,BoCam1は,調査したストレス関連遺伝子の中で切断損傷によるストレスに応答して,発現レベルを最も大きく増大させる遺伝子であることが明らかとなった。さらに,BoCam1は,切断損傷に対して極めて鋭敏に応答することに加えて,ストレス応答のシグナル伝達および,その後のさまざまな細胞応答に影響を与えることから,収穫後のキャベツの物理ストレスに関する研究において重要な遺伝子であることが明らかになった。