2015 年 41 巻 6 号 p. 267-272
製パンにおいて小麦生地中でのSS結合形成は重要な要因である。本報告では小麦生地中におけるSS結合に対するリコンビナント小麦プロテインジスルフィドイソメラーゼ(TaPDI)およびエンドプラズミックレティキュラムオキシドレダクターゼ1(TaERO1)の影響について検討した。まず,タンパク質へSS結合を形成することで還元化したPDIのERO1酸化再生能を解析した。その結果,小麦遺伝情報から取得したERO1はPDIに対し酸化再生能を有していた。また,還元変性オボムコイドへのSS結合形成能は,PDIのみではなくERO1およびFADが共存することで約3倍に増加した。強力粉から調製した小麦酸可溶性タンパク質にPDIおよびERO1, FADを作用させ,対角線電気泳動にて解析したところ,PDIはグリアジンに対し分子内にSS結合を形成することが示唆された。さらに,製パン適性の劣る中力粉を用い製パン試験を行ったところ,比容積は無添加で4.69cm3/gであったのが,PDIおよびERO1,FADを添加することで,5.34cm3/gとなり強力粉から調製するパンと同等となった。本結果より,製パン性が劣る小麦粉に対するPDIの製パン改良効果を確認することができた。