2023 年 49 巻 3 号 p. 141-149
卵白タンパク質の加熱ゲル物性は乾熱処理により向上する。乾熱処理乾燥卵白(DEW)製品は種々の食品の物性改良を目的に利用される。DEW製品は主に中性およびアルカリ性で製造されるが,それぞれ異なるゲル物性を示すため,目的とする物性を創出するために使い分けられている。したがって,タンパク質の性状は両者で異なると推察される。本研究では,同等の表面疎水性を示す中性DEW(NDEW)およびアルカリ性DEW(ADEW)製品のタンパク質可溶性凝集体の性状について調査し,ゲル物性への影響について検討した。ゲルろ過―高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により,NDEWはADEWと比較して可溶性凝集体の量およびその分子量が大きいと示された。ポリアクリルアミドゲル電気泳動および分子間架橋の定量結果より,可溶性凝集体の形成にはリジノアラニンおよびランチオニン結合が寄与し,両結合量はNDEWと比較してADEWの方が有意に多いことが明らかになった。陰イオン交換HPLCおよびその分画物を用いた電気泳動により,NDEWと比較してADEWの方がタンパク質可溶性凝集体の表面負電荷が強いと認められた。NDEWゲルは繊維状の構造が,ADEWゲルは小さい凝集体が均質に分散した構造が観察され,ADEWゲルは圧縮荷重が有意に小さかった。以上の結果より,NDEWと比較して,ADEWの可溶性凝集体の分子量は小さいが,そのリジノアラニン架橋密度および表面負電荷が大きいことが明らかになり,これら可溶性凝集体の性状がゲル構造および物性発現に寄与するものと推察された。