2023 年 49 巻 5 号 p. 237-248
ポリフェノール類とチオール類が共存した条件下でのラジカル消去反応では,それぞれが抗酸化反応を示すだけでなく,反応後のポリフェノール類がチオール類により再生され,再反応することにより,両者の相乗効果が発現すると考えられている。本研究では2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカル消去反応系における,ポリフェノール類とシステイン(Cys)またはグルタチオン(GSH)の併用効果をMedian effect analysisにより解析した。Cysとの併用では高濃度域においてepicatechin gallate(ECg)やepigallocatechin gallateなどガロイル基を有するフラバノール類およびミリセチンなどピロガロール構造を有するフラボノール類と相乗効果が強く発現し,GSHとの併用ではcatechin,epicatechin,ECgやケルセチンなどカテコール構造を有するポリフェノール類と強い相乗効果が発現した。CysおよびGSHのどちらの併用の場合も,相乗効果が強く発現するポリフェノール類はラジカル消去活性が高く酸化還元電位が低い,カテコールまたはピロガロール,ガロイル基を有する化合物で,これらの特性を有するポリフェノール類にCysおよびGSHが求核的に反応し,フェノール性ヒドロキシ基を再生することによりラジカル消去活性の相乗効果が発現していることが示唆された。