1991 年 17 巻 2 号 p. 58-64
ハッサク果実を0, 10, 20℃で貯蔵した際における水分損失, 膜透過性及び果皮の微細構造の変化について調査した。その結果, 貯蔵温度は果実の水分損失や膜透過性に大きな影響を及ぼし, 果皮表面のクチクラワックスの構造変化も引き起こすことが走査型電子顕微鏡観察によって明かとなった。
10℃で貯蔵した果実は, 膜透過性の増加及び果皮の微細構造の変化が顕著であり, その傾向は90日以上の貯蔵果実でより甚大であった。また貯蔵温度が10℃の場合, 30日を経過すると果皮の油胞に亀裂が生じ, 貯蔵期間の増加にともないよく観察された。さらに果皮表面ワックスが, 0℃貯蔵温度を除き貯蔵中に増加し, こ斑症発生の程度とよく一致することを認めた。これら果皮の微細構造, 電解質漏出量の変化と, こ斑症発生との関係について検討した。