抄録
ごはん症は, 主に本邦産中晩生カンキツ果実に発生する果皮障害で果皮の陥没に伴って褐変を生じる。障害の症状を悪化させる褐変現象は, フェノール物質の酵素的酸化に起因することが指摘さ礼この現象に抗酸化剤としてのL-アスコルビン酸 (AsA) が関与することが考えられる。本研究では, 5℃に3カ月貯蔵したハッサクと2.5カ月貯蔵した'清見'果実を用いて, AsA浸漬処理がその後の20℃貯蔵中のこはん症の発生及びフラベド中のAsAと総フェノール含量に及ぼす影響を調べた。
ハッサク, '清見'両果実ともに, ごはん症発生部のフラベドでは健全部に比べて, AsA含量は低く, 総フェノール含量は高かった。
ハッサク果実については, 1%AsA溶液1%エリソルビン酸ナトリウム (ErA) 溶液あるいは50℃温湯に10分間浸漬した処理区と水浸漬した対照区を設けた。AsA及びErA処理はフラベド中のAsA含量を増加させ, 温湯処理ほどではないがごはん症の発生と進行を抑制した。処理果実のフラベド中のAsA含量は, 20℃貯蔵中高い値を維持したが貯蔵最終日には減少し, 対照区との差がなくなった。フェノール含量はいずれの区も増加の傾向を示し, 処理区の間で増加量に差はなかった。
'清見'果実を1%AsA溶液あるいは水に10分間浸漬させた後, 無包装またはポリエチレン個装して20℃に貯蔵した。果実をAsA処理後に無包装で貯蔵すると, ごはん症は抑制されたが, ポリ個装すると, 抑制効果は貯蔵後半まで維持されなかった。AsA処理によるフラベド中のAsA含量の増加は, ハッサク果実に比べて少なく, ごはん症の抑制効果もハッサクの場合より小さかった。フラベド中のAsA及び総フェノール含量は, 貯蔵中を通して, 処理区の間に差はみられなかった。
これらの結果は, AsA処理がハッサク及び'清見'果実のこはん症の抑制に効果があり, その効果の程度は, フラベド部に吸収されたAsA含量に影響されることを示した。