抄録
低酸素濃度が果実に与える生理的影響のメカニズムに関する研究の一環として, 空気下と貯蔵酸素濃度を0, 1, 3, 5および10%に変えて貯蔵した場合における数種果実の低酸素障害の発生状況について調査し, その発生状況と果実の呼吸活性との関係について検討した。
低酸素障害は0%02下でピーマンでは貯蔵2日にがくの褐変として, ナスでは貯蔵3日に, ナシでは貯蔵4日に, カキでは貯蔵7日にそれぞれ異臭の発生として認められた。
低酸素濃度の呼吸活性抑制作用の貯蔵中の経時的変化の傾向は, 果実の種類により異なった。しかしながら, その傾向は低酸素障害の発生とは関連がなかった。
低酸素障害の発生が認められた日とその前日における酸素濃度と呼吸活性との関係について調べた結果, ピーマン, ナス, ナシおよびカキの呼吸活性は酸素濃度の減少に伴って低下し, 1%O2で最小を示して, 0%O2で再び増加することが認められた。
ピーマン, ナス, ナシおよびカキのいずれの果実とも呼吸活性が最小となる嫌気的補償点以上の酸素濃度下では, 低酸素障害の発生は認められなかった。