抄録
ツクネイモ, イチョウ・イモおよびナガイモの3種類のヤマイモを用いて, 「とろろ」および粘質溶液を調製し, その性状, 主に粘性特性とその変化ならびに各種処理が粘質物に及ぼす影響について比較検討した。
(1) 「 とろろ」および粘質物は擬塑性流体であったが高い濃度ではニュートン流体の特徴を示した。粘度が低いナガイモはツクネイモおよびイチョウイモに比べずり速度に従い急激な粘度低下を示した。「とろろ」および粘質物ともに粘度およびフローカーブは, 同一濃度においても3種のヤマイモには差異がみられた。
(2) pH, 塩化ナトリウムの添加および加熱処理による粘質物の粘度は変化し, これらの変化に対し糖タンパク質の溶解性や構造変化が影響していることが示唆された。
(3) 凍結および凍結乾燥処理による「とろろ」の粘度変化は, 不溶性成分の保水性が変化することによって惹起された。
最後に本報文をまとめるにあたり, ご助言をいただいた東京農業大学名誉教授谷村和八郎先生に感謝申し上げます。