抄録
0℃と10℃に貯蔵された男爵芋の融解点を示差走査熱量計 (DSC) を用いて測定した。その結果, 低温スイートニング (LTS) を起こした0℃貯蔵の試料では明らかに融解開始点が低くなっていたが10℃に貯蔵した試料ではLTSや融解開始点の低下は認められなかった。糖量の増加は融解開始点 (TO), 融解ピーク (Tp) および融解終了点 (Te) に影響を与えたが融解エンタルピーは試料中の糖量よりも水分量に影響を受けていた。
細胞外水分の融解を示す第一次吸熱は0℃および10℃貯蔵共にみられ。融解開始点の平均は-3.86℃であった。一方, 細胞内水分の凍結を示す第二次吸熱は, 10℃貯蔵試料の41.18%に認められたが (平均融解開始点-13.22℃), 0℃貯蔵においては全体の11.11%しかこの吸熱は認められなかった (平均融解開始点-12.20℃) 。以上の結果より, 低温貯蔵においてジャガイモ組織中の糖濃度が増加するのは, 糖の蓄積により凍結開始点を低くし, 細胞内凍結を起こりにくくするためと推察さ礼LTSは凍結からジャガイモ組織を守る一種の生体防御機能の一つと考えられた。