抄録
味噌に含まれる総および遊離フェルラ酸について分析し, 麦味噌および米味噌を比較したところ, フェルラ酸は麦味噌に多く含まれることがわかった。このことは原料である大麦にフェルラ酸が多く含まれることに起因すると考えられた。また, 麦麹には米麹に比べて総フェルラ酸含量, 遊離フェルラ酸含量ともに多く, かつ麹菌を接種しない大麦ではほとんど検出されない遊離態のフェルラ酸が麹中に多く見い出された。麹中の遊離フェルラ酸含量は麹菌の種類によって異ったが, これは製麹過程で大麦中の結合型のフェルラ酸を分解あるいは他の物質へ変換する能力の差によるものと考えられた。
麦麹のエタノール抽出液のDPPHラジカル捕捉能と総ポリフェノール量には正の相関が認められた。この抗酸化活性は製麹過程でのポリフェノールの増加とともに強くなる傾向が認められたが, これはフェルラ酸のみならず他のポリフェノール類も関与しているものと推定された。