抄録
比重差によって異なるバレイショの性状を, 植物細胞の骨格を成す細胞壁成分からアプローチすることを目的に, 比重の異なるバレイショからそれぞれ各細胞壁多糖を分画し, その収量と熱挙動を調べ熱処理後のテクスチャーとの相関について検討した。その結果, 低比重バレイショのほうが高比重バレイショに比べて細胞壁多糖およびセルロース画分量とも高い値を示した。熱分析ではヘミセルロース画分は, 約55~60℃および約75~95℃, セルロース画分は約80~100℃にそれぞれ吸熱ピークが認められた。バレイショ100gあたりの吸熱量に換算すると, 構成比率の少ないヘミセルロース画分では高比重バレイショのほうが約1.6倍の吸熱量を示したが, 細胞壁の主成分であるセルロース画分では逆に低比重バレイショが高比重バレイショの約5.4倍の高い吸熱量を示した。
以上, 比重差によりバレイショの加工特性が異なる要因の一つとして, 細胞の骨格を成す細胞壁多糖量およびその組成, ならびに熱的挙動が大きく影響することを明らかにした。