Journal of Applied Glycoscience
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Oxalobacteraceae 科細菌IM944株が生成する新規吸水性多糖の調製とその示差走査熱量測定
小川 和鋭山里 一英前田 好美
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2006 年 53 巻 1 号 p. 17-19

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抄録
カルボキシメチルセルロースの部分架橋により多量の水を速やかに吸収し,かつ粘稠性を生じない性質が発現した知見に基づき,同様の性質をもつ多糖を菌体外に生産する細菌の検索を行った.そのような菌体外多糖は,特異的な化学構造,あるいは,水中での高次構造をもつことが,また,生分解性の吸水性物質としての応用が期待できる.ツァペック・ドックス培地を用いて探索した結果,土壌より,自重の200倍の吸水能をもつ粗多糖(粗WAP)を生産する1菌株(IM944株)を分離した.IM944株は,形態学的性質,生理・生化学的性質,16S rRNA遺伝子の全塩基配列解析の諸結果より,Oxalobacteraceae科に属する新種と推定された.また,粗WAPを水酸化カリウム水溶液中で,セチルトリメチルアンモニウムブロミドと処理することにより,マンノース,グルコース,ガラクトース(モル比1:3:3)を構成糖とする精製多糖(WAP)を得た.WAPは吸水倍率120倍,窒素含量0.3%の白色,繊維状の粉末で,ウロン酸,アミノ糖は含まれなかった.この多糖は構成糖およびそのモル比から,新規の多糖と推定された.WAPの示差走査熱量測定(DSC)を行った結果(Fig. 1)は,60.5℃付近に頂点のあるピークを示した.数回の昇降温をくり返しても,ピークの形状にほとんど変化がなかったことから,WAPは均質な試料であると判断された.また,WAPのDSC曲線が転移ピークを示したことは,実質的に水不溶性である吸水性多糖においても可溶性多糖と同様に,何らかの高次構造を形成していることを示唆した.DSC法は,均質性の証明が困難な水難溶性多糖の均質性の証明法として有用である可能性が示された.
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© 2006 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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