澱粉科学
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多糖類分子鎖間および鎖内包接に関する研究(VII)
包接錯体調製法の改良
鈴木 晴男天海 弘荻野 秀一
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1982 年 29 巻 3 号 p. 198-204

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抄録
 天然の多糖類粒子内に種々の有機化合物を包接させるためにこれまで使用してきた方法の改良,についておもに述べてある. (1)従来はもっぱら,絶乾多糖,メタノール,ゲスト化合物からなる系で包接錯体を調製してきたが,この場合には,水の存在は常に包接を阻害し,また,メタノールの代りに無水エタノールを用いると,ほとんど包接が起らなかった.ところが,多糖,エタノール,ゲスト化合物からなる系では,少量の水の存在が包接を著しく促進し,エタノールも溶媒として使用しうることがわかった.この場合,エタノール中の水よりも多糖粒子中の水が,とくに有効であることが見出された. (2)従来は溶媒がかなり過剰に存在する状態で風乾を開始したが,実際の包接開始時の状態が解明された(既報)ことに基づいて,溶媒量を約1/3にへらすことにより,溶媒の節約,風乾時間の短縮,比較的沸点が低いゲストの包接量増加が,可能であることが実証された. (3)密ぺいした状態で多糖,溶媒,ゲストの3者を接触させておいても,高い包接量は決してえられなかった.この種の包接において大きな包接量をうるには,従来から行ってきた風乾という操作(fTストの存在下で多糖粒子内から溶媒を徐々に取除く操作)が,必須であることが改めて確認された. (4)少なくともゲストがベンズアルデヒドの場合には,有機溶媒を全く使用せずに水だけで,かなりの量(約60mg/9)がジャガイモ澱粉に包接された.これは澱粉粒内の水に溶解しうるベンズアルデヒドの量よりも,ずっと大きい量であった.
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© 日本応用糖質科学会
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