社会言語科学
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研究論文
話し合いの可能性―異質な他者との対話を通した学習とは―
村田 和代水上 悦雄森本 郁代
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2020 年 23 巻 1 号 p. 37-52

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抄録

本研究は,成人による課題解決をめざした話し合いにおける「異質な他者」との対話を通して,参加者にどのような変化が起きているのかを,実践のエスノグラフィと話し合い談話の分析を通して明らかにし,その変化を「学習」という観点から考察を試みる.生涯学習の領域では,子供の発達過程の学習が形成的学習であるのに対し,成人のそれは変容的学習であるとされている.本研究では,3つの話し合いの話し合いを対象に,それぞれ①1人の参加者を対象とした通時的な観点からの考察,②談話比較による考察,③1回の話し合いに対するミクロな考察の3つの観点から分析を行った.その結果,①については受動的な態度から積極的な態度への変化,②は,自分たちの組織や役割の再認識,③では,他者に対する想定や見方の変化を通した相互理解へと,いずれにおいても参加者のふるまいに変化が見られた.この結果は,話し合いの参加者の異質性が,参加者間の自他の関係性やコミュニティでの役割の再認識などの学びにつながっていることを示唆している.

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© 2020 社会言語科学会
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