抄録
西アルプスのピエモンテカルクシスト中白雲母の化学組成は異常に大きなバリエーションを持つ。見かけ上マスコバイトーパラゴナイト系及びマスコバイトーセラドナイト系両方の系において大きな組成範囲が見られる。緑泥石帯の高いNa/K比を持つ細粒白雲母類は砕屑起源の白雲母と考えられる。多分、カレドニアやバリスカンなどの高温変成岩類からもたらされたと想像される。サブマイクロ粒径のマスコバイトとパラゴナイトが混在していることが原因でEPMA分析値のNa/K比が0∼0.78まで連続的に観察された。ルチル帯ではパラゴナイト成分が20%以内であり、砕屑白雲母が存在していたとしても十分に均質化したと思われる。 砕屑起源の白雲母組成を除去したとしてもマスコバイトーセラドナイト系の大きな組成変化が見られる。明らかに他の主要な変成鉱物と非平衡な白雲母の存在を示唆する。これは変成岩類の上昇冷却過程で生じた後退変成反応が白雲母に進行したと言える。