日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G2-02
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G2:サブダクションファクトリー
北部マリアナトラフの背弧海盆地殻断面とトーナル岩類の起源
*増田 純一有馬 眞
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抄録
北部マリアナトラフの低速アマグマティック拡大軸に形成された水深5500mに達するCentral Graben(N20°E144°付近)には、上部マントルから上部地殻に達する背弧海盆地殻断面が露出している。深海調査研究船「かいれい」による調査航海「KR02–––01」で行われたドレッジで、上部マントルを構成するレルゾライト、ハルツバージャイト、ダナイト、ウェブステライト、下部地殻を構成するトーナル岩、閃緑岩、角閃石ハンレイ岩、キ石ハンレイ岩、ドレライト、角閃岩、上部地殻を構成する玄武岩が採取された。本研究では主にトーナル岩、角閃石ハンレイ岩の岩石学的特徴と、背弧海盆海洋地殻における化学的分化プロセスを検討した。トーナル岩、斑レイ岩中の斜長石や角閃石の化学組成は、全岩SiO2含有量と良い相関を示した。トーナル岩、角閃石斑レイ岩の全岩主要元素と微量元素は、同一マグマの結晶分化プロセスを示唆する連続的変化トレンドを示し、SiO2含有量約57wt.%に明瞭な屈曲点が認められた。全岩化学組成は、低いK2O値など背弧海盆玄武岩に特有な傾向を示し、島弧に産出する火成岩類と明確に区別される。このことから、本研究の深成岩類はトラフ拡大によって海底に露出した背弧海盆地殻起源岩石と考えられる。結晶分化作用、沈積作用のマスバランス・モデルを考察した。SiO2含有量=57%の変化トレンド屈曲点組成を初生マグマに近い値を示すと考えた。SiO2含有量>57%の岩石類について初生マグマの結晶分化作用モデル計算、SiO2含有量<57%の岩石類について初生マグマの沈積作用モデル計算を行った。斜長石、角閃石、およびイルメナイトの結晶分化作用モデルと沈積作用モデルで、全岩組成の変化トレンドを説明する事ができた。Central Graben Southに露出するトーナル岩、斑レイ岩類は、背弧海盆海洋地殻を構成する玄武岩の部分融解により形成された、安山岩質マグマの結晶分化プロセスで生成されたと考えられる。
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© 2003 日本鉱物科学会
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