抄録
1.はじめに地球核は鉄が主成分であると考えられているが、地震波速度の観測と地球核条件での純鉄の高圧実験によると、外核の密度は純鉄の密度より10wt.%程度軽い (Birch, 1964)。よって、地球核には軽元素が含まれていると考えられている。軽元素の候補として,S, O, Si, C, H などが考えられる (Poirier, 1994)。 外核の軽元素を特定するためには,高温高圧における鉄軽元素系の相平衡や鉄メルトへの軽元素の溶解量を調べなければならない。鉄と1つの軽元素による2成分系では高圧下において多くの相平衡実験がおこなわれている。しかし、1つの軽元素だけでは地球核の密度欠損を説明することができず、複数の軽元素による高圧実験がなされるべきである。O は地球内部で酸化物として多量に存在し,S はマントル中に枯渇しており (Murthy and Hall, 1970) 、両元素とも地球核に入り込む可能性があることから、Fe-FeO-FeS 系の高圧実験をすることは重要である。過去に 15GPa までUrakawa et al., (1987) によっておこなわれており、液相不混和領域が存在するという報告がなされている。本研究では、より高圧におけるFe-FeO-FeS 系の相関係と溶解量を求めた。2.実験方法高圧発生には東北大学理学部設置の川井型マルチアンビル高圧発生装置を用い、27GPa までの圧力で実験をおこなった。ZrO2, (Mg, Co)O 圧媒体、 Re ヒーター、Al2O3 カプセルを用いた。ガスケットにはパイロフィライトを用いた。 出発試料として Fe (99.99% pure)、FeS (99.9% pure)の粉末と、hematiteを雰囲気炉で還元したFe0.91Oを用いた。 回収試料の相同定は実験生成物の組織を観察することによっておこない、組成分析には波長分散型EPMAを使用した。3.実験結果 23GPa, 27GPa における共融組成はFe66.3O2.82S30.9、Fe75.5O1.2S23.2 という結果が得られ,低圧の結果より O の量が低いことがわかった。また、Fe-FeO-FeS 系の1600℃までの共融曲線からOの溶解量が低圧より少ない傾向にあるという結果が得られた。23GPaにおいて、液相不混和は見られなかった。 以上のことから,核形成の過程でO がmetal にはいる可能性はあるが、珪酸塩鉱物間をメルトが沈降する場合、溶解量は1wt.% 未満であり,核の密度欠損を説明することができないことがわかった。