新生児集中治療室(neonatal intensive care unit; NICU)における監視培養の目的は,水平感染を監視し,また,新生児が後天性感染症に罹患した場合に,適切な抗菌薬選択ができるため広く実施されている。我々は,2012年から2019年のNICUにおける監視培養を対象とし,2017年変更前後のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA)およびメチシリン感性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus; MSSA)の検出率と費用を調査し,効果的な監視培養の検討を行った。変更前の2016年まではNICUに入院している全患者に隔週で鼻腔ぬぐい液,便および臍の検査を実施しており,MRSAの検出率は95.2%,84.6%,60%,MSSAの検出率は99.3%,68.2%,60.9%であった。MRSAとMSSA共に,鼻腔ぬぐい液から高頻度に検出されることが明らかになった。費用は2016年まで平均で808,331円/年であり,鼻腔ぬぐい液が267,957円/年,便が379,793円/年,臍が160,581円/年であった。この結果をふまえ,有効性と費用対効果を考慮し,2017年から監視培養を鼻腔ぬぐい液のみにする方針とした。これによりMRSAとMSSAの新規検出率に大きな変化なく,検体数は約65%減少し,費用も73%削減された。今後,感染対策や治療において問題が生じることがないようであれば新方針で継続して実施していく。