医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
症例報告
尿沈渣中の細胞形態と迅速診断キットの併用からアデノウイルス性出血性膀胱炎の診断に至った症例
川満 紀子白濱 早紀上田 沙央理堀田 多恵子
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 70 巻 1 号 p. 150-154

詳細
抄録

我々は,尿沈渣検査の細胞形態よりアデノウイルス(ADV)感染を疑い,咽頭用の迅速イムノクロマトキットを併用することで迅速に診断できた2症例を報告する。ADV性出血性膀胱炎は,一般的に血尿や頻尿,膀胱刺激症状が激しく,重症例では凝血塊による尿閉やADVが全身性に播種し致死的な経過をとる場合もあり迅速な診断が必要である。2症例の尿沈渣検査で確認された特徴的な細胞は,核が腫大しN/C比大,核の辺縁が不明瞭で核全体が一様にくすんだ変性した細胞形態を呈していた。文献報告よりこの細胞形態はADV感染細胞を疑い,咽頭用迅速診断キットを用いたところ陽性ラインを検出した。後日尿中ADV-PCR定量においても高値であることが判明した。尿沈渣では肉眼的血尿が出現する以前よりADV感染細胞が観察され,早期診断につながった。尿沈渣検査の形態だけでADV感染細胞を判断することは難しいが,迅速診断キットを併用することで,ADV感染細胞の出現の疑いを臨床に報告することが可能となる。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top