標本とスライドガラスの接着についての検討から,乳腺断端術中凍結HE標本における組織切片の剥離防止法の確立を試みた。接着の検討には,組織パラフィン切片及び細胞診残余材料を用いて,剥離防止コートスライドガラスとの接着に関する検討を行った。その結果,染色に耐えうる標本の接着を得るためには,パラフィン組織切片は水で濡れることが必要で,かつ,パラフィン組織切片及び細胞診標本とも,剥離防止コートスライドガラスとの接着面から,乾燥や脱水による十分な水の拡散が必要であった。次に,乳腺断端術中凍結HE標本の標本剥離防止の検討を行った結果,標本作製時の固定法の選択が肝要で,湿固定に比し,乾燥を含む固定法では,有意に標本の剥離が抑制された(p < 0.001)。実際の運用としては,細胞診標本固定法の一つである噴霧固定による標本作製を行うことで,標本剥離を抑制し,かつ,良好な染色性が担保された乳腺断端術中凍結HE標本の作製が可能であった。