医学検査
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原著
尿蛋白陰性症例における尿沈渣成分中硝子円柱数の腎機能予後予測因子としての可能性―CKD重症度分類の追跡調査による解析―
石田 真理子石田 秀和岡 有希上野 嘉彦白上 洋平渡邉 祟量大倉 宏之菊地 良介
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2024 年 73 巻 3 号 p. 440-446

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抄録

尿沈渣検査は侵襲性が低く,特別な装置を必要としないため,汎用性が高い臨床検査である。中でも,尿沈渣成分の一つである硝子円柱は腎機能を反映することが知られている。今回我々は尿中硝子円柱数が腎機能悪化の予測因子となる可能性について検証した。2015年に尿沈渣検査を行った尿蛋白定性陰性の症例250例を対象とした。尿中硝子円柱数を < 10,10–29,30–99,≥ 100/全視野(WF)の4群に分け,CKD重症度,GFR区分,尿蛋白区分の進行をエンドポイントとして最大8年間観察した。尿中硝子円柱数群別にCKD重症度,GFR区分,尿蛋白区分の進行患者数を比較したところ,有意な傾向性は認められなかった。硝子円柱数10/WF,30/WF,100/WFをカットオフ値としてCKD重症度,GFR区分,尿蛋白区分進行のハザード比を算出したところ,CKD重症度,GFR区分の進行で有意なハザード比が観察された。尿中硝子円柱数10/WFをカットオフ値として腎機能悪化の累積発生率を比較したところ,≥ 10/WFの症例群で比較的早期に腎機能悪化を認めた。尿中硝子円柱数が ≥ 10/WFの症例では将来的に腎機能悪化する可能性が高いことが示唆された。本結果から尿中硝子円柱数は尿蛋白陰性症例において腎機能悪化の予測因子となることが推察された。

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