2026 年 75 巻 2 号 p. 433-439
Streptococcus iniaeは主に魚類の病原菌であり,ヒトへは魚類の調理時に手の創部から感染すると報告されている。今回,明らかな創傷や魚類との接触歴は認められなかったが,菌血症の原因菌としてS. iniaeを同定した症例を経験したため報告する。患者は化学療法中の70代男性。腹痛,発熱,悪寒戦慄を主訴に救急搬送された。血液培養より連鎖状のグラム陽性球菌を検出し,5%ヒツジ血液寒天培地上にβ溶血性のコロニーが発育した。Lancefield型別試験陰性(A,B,C,D,F,G群),FilmArray血液培養パネルではStreptococcus属の共通プライマーのみが検出された。質量分析では第一候補のみS. iniaeであったが,第二候補以降は生化学的性状や遺伝子検査の結果から否定的であった。生化学的性状による菌種同定キットのデータベースにはS. iniaeは含まれていなかったが,菌種同定キットと基準株の生化学的性状が大きく矛盾していなかったため,総合的に判断し,臨床へS. iniaeであると菌名を報告した。後日実施した16S rRNA遺伝子解析においても,相同率99.79%でS. iniaeであると同定された。同定の難しさからS. iniaeはこれまで正確に菌名を報告できていなかった可能性があり,今後の疫学情報蓄積のためにも質量分析装置や遺伝子学的な菌種同定が必要であると考える。